砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
煙が上ったのとほぼ同時に、ふらりと毬がよろめいた

 雅之は慌ててその身体を抱き上げる。


「安倍様、今のは……」

 皆が呆気に採られていた中で最初に口を開いたのが和子だった。

 龍星はわら人形を火で燃やしながら、体温のない声で答える。

「見ての通り、右大臣に巣食っていた鬼を調伏した。
 鬼が居なくなった元の体がどうなるかまでは、私の関与するところではない」

 帝はさっさと踵を返していた。
 おそらくは牢に向かって、その後の様子を確認するのだろう。

 龍星は調伏後の処置を施してから、呆然としている唯亮と和子を見る。

「お呼び立てした理由はこの立会いでした。
 お帰りいただいて結構です」

 慇懃無礼な口調でそう言うと、雅之の腕の中で真っ青になっている毬を大事そうに受け取った。



「ご多忙の折恐縮ですが、どうしても取り急ぎ、折り入ってお話したいことがあります」

 口を開いたのは、唯亮だった。
 真剣な眼差しが眩しいほど真っ直ぐ、龍星を見据えている。
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