砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
龍星は、先ほど雅之に耳打ちされた言葉を思い出していた。
『言いにくいのだが、龍星。
どうやら、唯亮殿は毬に一目ぼれしてしまった様子。
今回は、毬姫に似たと噂の千姫を一目見れたらという想いで、あの行列に秘かに加わったのだと白状したよ』
龍星はそれを耳にしたとき、毬を手放すなら今しかない、と、理解した。
二人は年も近いし、何かと敵対している右大臣家と左大臣家が婚姻で結ばれるのであれば、しばらくは都も平穏になるのではないか、と思ったのだ。
毬も、姫として相応の暮らしができるだろう。
自分なんかと暮らすよりもずっと、平穏な日常が過ごせるはずだ。
けれども。
そう考えた途端に、今までにないことが彼の身に起きた。
心臓がぎゅんと、何かに掴まれたように戦慄いたのだ。
恋に溺れて身を滅ぼした話なら、ごまんと知っているというのに。
自分は、毬に釣り合わないと頭の隅では自覚しているというのに。
しかし、彼はあさましいと自分をあざ笑ってもなお、今更彼女の手を離すことなど出来ないと気づいてしまったのだ。
『言いにくいのだが、龍星。
どうやら、唯亮殿は毬に一目ぼれしてしまった様子。
今回は、毬姫に似たと噂の千姫を一目見れたらという想いで、あの行列に秘かに加わったのだと白状したよ』
龍星はそれを耳にしたとき、毬を手放すなら今しかない、と、理解した。
二人は年も近いし、何かと敵対している右大臣家と左大臣家が婚姻で結ばれるのであれば、しばらくは都も平穏になるのではないか、と思ったのだ。
毬も、姫として相応の暮らしができるだろう。
自分なんかと暮らすよりもずっと、平穏な日常が過ごせるはずだ。
けれども。
そう考えた途端に、今までにないことが彼の身に起きた。
心臓がぎゅんと、何かに掴まれたように戦慄いたのだ。
恋に溺れて身を滅ぼした話なら、ごまんと知っているというのに。
自分は、毬に釣り合わないと頭の隅では自覚しているというのに。
しかし、彼はあさましいと自分をあざ笑ってもなお、今更彼女の手を離すことなど出来ないと気づいてしまったのだ。