砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「唯亮殿は――、どうしたらいいのやら」

 これも、厄介ごとの一つだ。
 それに、色恋沙汰に疎い雅之には、正直言って対処の方法が思い浮かばない。

「何、しらばくは忙しくて色恋にかまけている暇もないさ。
 気にすることはない」

 龍星は以外にも軽くそう言いなした。

「――しかし――」

 いきなり、几帳をめくるほど非礼な行動に走る奴だ。
 このままで放っておけば、何をするかわかったものではない、と、雅之は懸念していた。

「――お前も言ってたじゃないか、若気の至りと。
 そういうのは、早々に覚めるのが世の常。
 ためしに、兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)辺りと交流させてみれば、きっとすぐにほかの姫に目が行くさ」

「あの、艶聞(えんぶん)の絶えない?」

 雅之が眉を潜める。
 遊び人と有名な兵部卿宮は、それなりに笛がうまく、周りが何かとこの二人を競わせようとするし、当の兵部卿宮も雅之のことを敵対視しているところがあるので少々辟易しているのだ。

  
「そう。
 まぁ、彼でなくてもほかにあてはあるし――。
 喪が明けるまでには手を打つから心配には及ばない」

 龍星はさらりとそう言った。
 彼の中にはもう、物語が出来上がっているのかもしれない。と、雅之は思い、わずかに安堵した。
 
 
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