砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「気にかけているのは毬(まり)のことだよ」
毬姫……
龍星はその名前に聞き覚えはなかった。
「千の妹で、もちろん私の実子だ。器量だけていえば千を上回る程なのだが」
千姫は幼い時から、その容姿格別たる女子が左大臣家に居るらしいなどと噂好きな都人の間でも名が知れていた。しかし、毬姫の名前など上ったことが一度もない。
もちろん、娘を大事にするあまりその存在をひた隠しにすることなど、当世ではよくあることではあるが、そのような考えが左大臣にあるのならば、千姫の存在さえも秘密裏にしていたはずである。
訝る龍星の視線に気付き、タヌキはパチリと扇子を鳴らして隣の部屋に待機する女房に告げた。
「毬をここへ」
「はい、ただいま」
毬姫……
龍星はその名前に聞き覚えはなかった。
「千の妹で、もちろん私の実子だ。器量だけていえば千を上回る程なのだが」
千姫は幼い時から、その容姿格別たる女子が左大臣家に居るらしいなどと噂好きな都人の間でも名が知れていた。しかし、毬姫の名前など上ったことが一度もない。
もちろん、娘を大事にするあまりその存在をひた隠しにすることなど、当世ではよくあることではあるが、そのような考えが左大臣にあるのならば、千姫の存在さえも秘密裏にしていたはずである。
訝る龍星の視線に気付き、タヌキはパチリと扇子を鳴らして隣の部屋に待機する女房に告げた。
「毬をここへ」
「はい、ただいま」