砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「さぁなって。
 心配じゃないのか?」

 思いがけず呑気な返事に、雅之は顔を曇らせる。

「姫がどうしても左大臣家に帰りたいといえばそのように取り計らうさ。
 でも、もともと嵐山で長く過ごしていた身だ。
 案外、都暮らしは退屈なのでは、とも思う」

「嵐山に連れて行くのか?」

「いや……
 そんなことは思いもよらなかったよ」

 ではどうするのだ、と、気色ばむ雅之を見て、龍星は面白そうに微笑む。


「それは、姫が目覚めてから聞いてみるとするよ」

「それはそうだが」

 と、雅之は心配そうだ。
 実直なこの男は、おそらく、石橋をたたいて壊し、岸の向こうを指を銜えて眺めているタイプなのだろう。

 川に船を浮かべるとか、別の橋を探すとか、自分で橋を架けるとか。
 そういうことをすれば良いだけなのに。


 すっかり酒の準備が整った。


「さて、どこから話そうか?」
 

 杯を片手に、龍星は紅い唇でことさら色っぽい笑みを作った。

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