ミックス・コーヒー
 そして、同居している女が鍵を掛け忘れたのを見計らい、夢中で家から逃げ出したのだ。

 とりあえず、財布の入った小さなカバンを持って出てきたものの、所持金もわずかなものだった。
 その、わずかな所持金で、出来るだけ遠くへ行こうと切符を買い、電車に飛び乗った。



 着いた場所は小さな下町だった。

 子供の頃に数回、来たことはあったかもしれないがほとんど覚えていない。
 ただ、居心地は悪くなかった。

 夜になり、人の視線が気になるようになった。
 特に、男達の視線が嫌だった。
 煩わしくて、どうにかしようと、ふと、目に入ったゴミ捨て場の毛布などを持てるだけ持つと、人波をくぐり抜け小さな公園へと逃げ込んだ。
 その、茂みの中で毛布に包まり、できるだけ小さくなって、その夜を越した。

 朝になり、大きくなった荷物を抱えて、家から少しでも遠くへと再び歩き始めた。
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