ミックス・コーヒー
「とりあえず、暗いからこっちの部屋の電気もつけてよ」

「おまえのそのワンマンぶり、もう言葉にできねぇ」
 貴之は、渋々襖の横にあるスイッチを押して、灯りをつける。

 正常な視力で、改めて貴之の両親を見つめる美葉。
 その時間は長く、約1分は言葉を使わなかった。

 そして、ゆっくりと手を合わせると静かに瞳を閉じた。

 そんな美葉の行動に、貴之は驚いていた。

 だが、その後の美葉の言葉にはもっと驚いた。

 約2分の合掌の後の、言葉だ。



「やっぱり私、貴之のこと好きだよ」



 貴之は、口を開けたまま固まってしまった。
 そういえば、昨日も<好き>と、言われた気がする。

 なるべく考えないようにしていたのだが。
 だって、その意味を考えれば考えるほど、わけがわからなくなる。
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