ミックス・コーヒー
 彼女の気配が心地よかった。
 だがその反面、少しそれが苦しかった。



「……貴之、泣いてるの?」



 美葉に言われて、貴之はハッとした。
 いつのまにか、涙が流れていた。

 暗闇に慣れたのか、美葉の指が貴之の涙を捕えて、拭う。

「美葉は、泣かないの?」

 彼は自分でも、どうしてこんなことを言ってしまったのかわからなかった。

 一方彼女は平然と答えた。

「泣いた方がいい?」

「いや……」
 貴之が慌てる。

「貴之が、代わりに泣いてくれてるから」

 美葉は貴之の肩に頭を乗せた。

「ありがとう」
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