ミックス・コーヒー
   ②

 数日後。

『プルルルル……』

 開店してからまもなく、電話が鳴った。

 なぜか、いつも他の二人は出たがらないので、今回も貴之が出る。

「はい、<喫茶ひょっこり>です」
 ちなみに、尚樹達の電話に出たがらない理由が、この店の名前自体にある、ということは貴之は気づいていない。

『シャチョサン、アタシヨ。アタシ』

 貴之が一瞬固まった。

「……おまえ、さては李だな?」

『チガウヨ、チガウヨ。アタシ、さゆりヨ』

「ウソつけ! そんなカタコトのさゆりさんがいるか!」

 貴之は、受話器を握り締め、明らかに苛立っている。
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