ミックス・コーヒー
   ④

 あの後、ショックでとても一人では歩けなかったミクリは、尚樹に支えられ、彼のアパートまでようやくたどり着くことができた。

 部屋に着いてからも、震えが止まらないミクリの手を、尚樹はずっと握り締めていた。

 ミクリの涙は、止まったり溢れたりを何度か繰り返し、約一時間後にようやく幾らか落ち着いた。

「……あ、卵」
 ふと思い出し、ミクリは自分の横にある袋を覗いた。
 プリンはなんとか食べられそうだが、卵はぐちゃぐちゃだった。

「卵? 何か作ろうとしたの?」

「……カルボナーラっぽい物」

「あ、カルボナーラではないんだ」
 尚樹が少し笑う。

「だって……作り方わかんないから」
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