ミックス・コーヒー
「食べたいって言ってくれたら、おれが作るって言ったろ?」
 尚樹がそう言うと、ミクリは顔を伏せた。

「……もし、おいしく出来たら、尚樹くんに食べてもらおうかなって」

「おれの、ため?」
 
 尚樹が一瞬で悲しそうな表情になったのが、ミクリにはわかった。

 慌てて言い直す。
「あっ、いやいや! あたしが勝手に……」

 尚樹が、握っていたミクリの手を引き寄せる。
 ミクリの顔が、尚樹の大きな胸にすっぽりと収まった。

 ミクリは、苦しかった。
 


 あれから何分くらい経ったろう。

「ねえ」
 久しぶりの尚樹の声だ。

「……おれ、ミクリちゃんの彼氏になってもいい?」
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