ミックス・コーヒー
 頭の上で優しい声が響く。

 ただ、その内容に驚き、ミクリは顔を上げる。
 そこには、真剣な表情の尚樹の顔があった。

「……尚樹くん?」


「そうしたら、君のこと、思う存分守れるから」


 尚樹のまっすぐな瞳に吸い込まれそうだった。

 胸が、締め付けられて、痛い。


「彼氏、いるって言ったら?」

「……もしそんな人がいるなら、おれはその人を許せない」

「なんで?」


「ミクリ……を、守れていないから」

 静かな部屋の中で、心臓の音が、よく響く。

「……ウソ、彼氏なんていない」

 ミクリが、尚樹から目を逸らす。
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