ミックス・コーヒー
「ええ。キャバクラですね。店の名前は<グン☆ナイ>とかいいましたよ」

 貴之の表情が固まる。

 あの、思い出すだけでイラつく李からの電話。
 確かにその時、彼女は自分の店の名前を<グン☆ナイ>と言った。

「……どうしたんですか? 伊藤さん。さっきからなんか変ですよ」

「い、いや。大丈夫です」
 貴之は、必死に平然を装っていた。

「彼女も、一応<恋人>が殺されたのだから、傷心旅行にでも行ったのでは……」
 貴之は、自分でも適当な事を言ってしまったと、すぐに後悔した。

 沢下はそれに、神妙な表情で答える。
「そうなんですかね。しかし、菅浦エリカが消えたのは……まずいんですよね」
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