ミックス・コーヒー
「……警察は、エリカのこと疑ってるんでしょ。でも、私にはあの子が殺人や放火なんて、とても信じられない。そんな度胸はないはず、絶対。今は、エリカのことがとにかく心配だわ……」
 
 貴之達から見て、よし子は、友達の安否を祈る普通の女性でしかなかった。

 貴之は、キャバクラなどで働く女性達を、全く別の世界の住人の様に見ていたが、今の彼女を見ていて、その印象は少し変わりつつあった。

「……貴之、あのことも聞かなきゃ」
 尚樹が静かに切り出した。

「ああ、そうだったな。……よし子さん、川村さんというお客さんを知ってますか?」

「川村さん?」
 よし子の表情が急に険しくなった。

「あの男がどうかしたの?」

 先程とは様子が全く違うよし子に、戸惑いながら貴之が答える。

「いや、李から聞いて、ちょっと変わったお客さんだったようなので……」
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