ミックス・コーヒー

「変わってるっていうか、怪しいわよ、あの男。エリカは懐いていたみたいだけど、私はどうも受け入れられなかった。陰気っていうか……なんか、気持ち悪くって。探偵って、みんなあんな感じなのかしら」

「「探偵？」」
　貴之と尚樹は、意外なその単語を、同時に聞き返していた。

「そうよ。あ、待って、名刺持ってる」
　すると、よし子は一枚の名刺を貴之達の前に差し出した。


＜私立探偵・川村克彦（かわむらかつひこ）＞


「……本当に探偵なんだ」
　尚樹が、名刺を覗き込みながらつぶやく。

「その名刺あげる。私はいらないから」

　思いがけないもらい物に、貴之が軽く会釈する。

「ありがとうございます。……あと、もう一ついいですか？　エリカさんは、最近お金が入るかもしれないとか言ってたそうですけど」