ミックス・コーヒー
<第一章>

 都内では雨が降り続いており、今日でもう三日目になる。
 まだ四月だというのに、梅雨がフライングでもしてしまったのだろうか。
 
 その商店街は、都心から少し奥に入ったところにあり、昔ながらの客で賑わう。のだが、今日はあいにくの悪天候により、人通りは少ない。

 先月、閉店してしまいシャッターが下がったままの元紐屋(紐のみ専門で扱っていた店)の前に<彼女>はいた。

 いや、一目で彼女、と判断出来た通行人は、おそらくいない。
 彼女の出で立ちは、薄汚れた毛布やタオルを重ねてそれに包まって座っているという、実に見窄らしい姿であった。
 そのうえ、髪の毛はボサボサで、顔は隠れてしまっている。

 もはや<人>と判断するだけで精一杯である。

 そして性別判断の手がかりは、どうやら少し小柄であるということ、加えて毛布がピンク色であるということの二つだけだ。
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