ミックス・コーヒー
   ④

「貴之、なんか隠してることあるだろ」
 
 帰りのタクシーの中で、尚樹が切り出す。

 貴之は、もともとそれを尚樹には話してもいいだろうと思っていた。

 ただ、なかなか言いだせずにいたのも事実だ。
 だから、今がようやくそのチャンスなんだ、と考えたりもしながら……尚樹に<あの日>のエリカとのやり取りを話した。

「……そっか。だから、エリカさんはあの時、美葉をあっさり連れ出させてくれたんだ」

「まあな」

「でも、一回も遊んだりしてないんだろ?」

「だって、こえーもん。会ったら食われるもん」

「いい歳した男が、だらしねえなあ」
 尚樹が笑う。

 貴之はそれにちょっとだけ笑うと、少し考え込んだ。

「……菅浦エリカが犯人なのかな」
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