ミックス・コーヒー
「それは……これからですね」
 沢下が小さな溜息をついた。

 少しの間、この空間に沈黙が流れた。
 
 やがて、貴之が重々しく口を開く。
「……シゲさんや、沢下さんは<川村克彦>という探偵を知ってますか?」

 川村だと!と、声を荒げたのはシゲだった。
「タカちゃん、どうしてそいつを知ってるんだ?」

「シゲさん……。川村って<あの>探偵ですよね?」

 シゲや沢下の反応は、貴之の想像を超えるものだった。

 警察の彼らなら、探偵とも接点があるだろうし、なんとなくでも記憶にあれば参考程度に……というぐらいにしか考えていなかったのだが、思った以上に川村は知られていたようだ。

「……菅浦エリカのキャバクラに、客として最近よく来ていたらしいです」

 貴之の言葉に、沢下が目を丸くした。
< 205 / 366 >

この作品をシェア

pagetop