ミックス・コーヒー
   ⑤

 尚樹がシャワーを浴び終わり、部屋に戻ると、彼のTシャツと短パンに着替えたミクリがそこにいた。
「おかえり」

「ミクリもシャワー浴びる?」

「うん。今、行ってくる」

 尚樹は脱衣所に向かうミクリの背中を目で追った。

 彼女には、尚樹の服は大きすぎたようだ。

 でも、そんなぶかぶかのTシャツを着ているミクリが、尚樹はどうしようもなく愛おしかった。


 付き合い始めてから、二人のデートはもっぱらお互いの家の中だった。

 マスコミにばれないように、一応注意を払いながら<密会>をしている。
 だが、お互い性格がサッパリとしている為「もしバレたら、その時はその時だね」と、話もまとまっている。

 だが、今までどちらかの家に泊まる、ということはなかった。

 なんとなく、尚樹がそれを避けていたのだ。
< 219 / 366 >

この作品をシェア

pagetop