ミックス・コーヒー
 この数十分の間、尚樹の頭の中では、いろいろな葛藤が繰り広げられていた。

 大きく溜息をつきながら、尚樹がベッドの上に寝そべる。

「どうしたの。溜息なんかついて」
 髪を乾かし終えたミクリが戻ってきた。前髪と後ろ髪をそれぞれ結んであって、まるでちょんまげのようだ。

「べつに、なんでもないよ」
 と、尚樹はゆっくりと右腕を横に広げた。
 その腕の上に、ミクリがぎこちない様子で頭を乗せる。体は尚樹の方を向いている。

 尚樹は、優しく微笑みながら左手でミクリのちょんまげをいじって遊んでいる。

 ミクリがゆっくり瞳を閉じる。

「眠い?」

 尚樹がそう言うと、ミクリは再び瞼を上げた。

「……あたしって、魅力ないかな」

 ミクリの言葉に、尚樹が目を丸くする。
 思わず動きも止まってしまった。
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