ミックス・コーヒー
 ミクリを見ると、目を伏せて、恥ずかしそうな、悲しそうな、なんともいえない表情をしていた。

「やっぱり、このちょんまげとスッピンが……」

「ごめん」
 尚樹はミクリを抱きしめ、彼女の顔を優しく自分の胸に埋めさせた。

「そんなこと言わせちゃって、ごめん」

「なんで、尚樹くん、謝ってるの?」
 尚樹の胸に、ミクリの声が響く。

「おれ、怖かったんだ。ミクリの全部を手に入れることが」

 尚樹の腕の中から、ミクリが顔を出す。
 そして、不思議そうに尚樹を見つめた。

「もし、ミクリの全てを手にしてしまったら、おれは更にもっとミクリに何かを求めてしまうかもしれない……自分が、そうなってしまうことが、怖かった」
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