ミックス・コーヒー
 それほど、奥に行かない場所に<それ>はあった。

 マンションの明かりが、わずかに照らしている。
 
 ……人が、横向きで倒れている。



 尚樹は、自分の周りの時が止まってしまったように思えた。

 背中を、頭を、腕を、足を、さっきからの気持ちの悪い風が更にザワザワと撫で回す。

 そして、全身の毛穴が一斉に開くのを感じた。
 

 
「……みっ……ク……」



 声が、出ない。

 その<名前>を、ちゃんと呼ぶことができない。
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