ミックス・コーヒー
「今の尚樹、嘘つきだよ。ホントは、違うんでしょ?」

 尚樹は、美葉から目が逸らせなかった。



「ホントの尚樹、見せてもいいよ」

 美葉は、尚樹に向かって両手を伸ばした。



 尚樹の眉が下がる。口の端も下がる。

 次の瞬間、尚樹は美葉に抱きついていた。


「ごめん、美葉。ごめ、ん」


 震える尚樹の肩を、美葉は強く抱きしめた。

「美葉も、辛いのに……。でも、おれ……」

 
 尚樹のそれは、ほとんど言葉にはなっていなかったが、必死で美葉の耳元に送り続けた。
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