ミックス・コーヒー
 尚樹は、ミクリの左手薬指に<リング>を作った。



「ミクリ、わかる? 今はこんなのでしょうもないけど、戻ってきたらちゃんとしたのをあげるからな。そして、全てが終わったら……そうだな、今日の一年後に、結婚しよう」



 ささやき続ける尚樹の声は、今まで貴之が聞いてきた彼の声の中で、一番優しく、温かかった。

 気づいたら、貴之の目からは涙が溢れ出していた。



「約束するよ。誰よりもミクリを幸せにする。一生、愛し続ける。だから……戻ってきてよ」


 
 ここに。

 戻ってきて……。



 尚樹は<リング>に更に強く力を込め、ミクリの布団に顔を埋めた。
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