ミックス・コーヒー
 何をグズグズしているんだ……と呟く河内からは、近寄りがたい雰囲気が出ていた。


 これが<娘>を心配する父、というものなのだろうか。


 貴之は、切ないような、怖いような、不思議な感情で河内を見ていた。



「あの、すみません」

 ふと、初めて聞く声に、貴之達が一斉に振り返る。

 そこには、女性が立っていた。

 肩ぐらいまで伸びているやや茶色のミディアムヘアーを揺らし、こちらに向かってお辞儀をする。
 そして、体を起こした彼女の顔を改めて見てみる。

 年齢は三十代前半、といったところか。

 きりっとした顔立ちの中に、疲労の様子が色濃く映し出されている気がした。
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