ミックス・コーヒー

「吉本さんか」

「……河内さん、いらっしゃっていたんですね」

　その女性と河内は顔見知りだったらしく、二人の会話から彼女が＜吉本＞という名前だということを貴之達は知る。

「彼女、吉本かほるさんは、ミクリちゃんのマネージャーだ」
　河内の紹介に「はじめまして」と吉本は貴之達に再び会釈する。

　なるほど、芸能関係者か、と、貴之は妙に納得する。

「美葉さんに、尚樹さん……ですね。ミクリから話を聞いていますよ」

「……あ、あの。オレ、伊藤貴之っていうんですけど。ご存じではなかったでしょうか？」
　自分の名前だけ触れられなかったため、貴之が慌てて聞く。

「イトウ、タカユキさん……ああ、なんか＜もう一人＞いる、みたいな感じで聞いていたのは、あなたのことでしたか。大変失礼致しました」