ミックス・コーヒー
 再び椅子に腰をかけ、意識して声のトーンを下げ、貴之が続ける。

「……身元がわかんないのに、ここにおいとくわけにはいかないだろ。そんな、非行の手伝いなんかしねーぞ」

「大丈夫だって。貴之」
 なぜか、尚樹が宥めるように言う。

「なにがだよっ!」
 貴之の意識付けは全く続かなかった。

「美葉は怪しくなんかないよ」

「いやいやいや、これが怪しくないんだったら逆に何が怪しいんだ」

「子供の家出じゃないんだから、きっと家に帰れない深い訳があるんだよ。時が経てば、美葉も話してくれるだろうし」

 いつの間にか、尚樹は美葉の肩を持ち始めているようだ。
 貴之には、それがまたおもしろくなかった。

「元はといえば尚樹の責任だからな!」

「なんで?」
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