ミックス・コーヒー
 5分程経っただろうか。

 吉本もだいぶ落ち着いたようだ。
「……みなさんと、少しお話しをしたいのですが、ちょっとここを出ませんか?」

 吉本の申し出に若干驚きつつも、断る理由もないので、貴之達は素直に従い、同じ階のロビーへと向かった。

 そして、ソファに並んで腰をかけると、吉本は静かに語り始めた。


「実は、私、知っていたんです。ミクリがあの事件を追っているのを」


<あの事件>とは、古亭路美鈴の件のことだろう。

 それは、貴之達には容易にわかった。

「私の先輩が、古亭路美鈴さんのマネージャーをやっていたので、その時の様子はいろいろと聞いていたのです。ミクリが、彼女の娘さんだということを知った時、黙ってはいられませんでした。もっとも、ミクリもそのつもりで私に打ち明けたようでしたが」

 吉本が、顔を手で覆った。


「そもそも、あの時、私が余計なことを言わなければこんなことにはならなかったのかもしれません」
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