ミックス・コーヒー
   ③

「シゲさん! 沢下さんも」
 貴之が腰を上げる。

「遅くなってすまん。ミクリちゃんの様子はどうだ?」

「今は落ち着いています……ところで」

「わかってる。凶器のことだろ?」

 貴之が頷く。

 尚樹や美葉、そして吉本が息を呑む中、沢下が口を開く。

「残念ながら、指紋は検出されませんでした。犯人はおそらく手袋でもしていたのでしょう。事件があったのは夜だったので、目撃者もいませんでした」

 貴之は深い溜息をついた。



「……君が、第一発見者だったようですね。渡辺尚樹さん」
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