ミックス・コーヒー
「瀬戸警部……一つだけ、手がかりになるかもしれないことがあったじゃないですか」

 沢下がそう言うと、瀬戸は「ああ、そうだったな」とだけ漏らした。

 いちいちわざとらしくて、カンに障る。
 貴之は苛立っていた。

「手がかり?」
 沢下の言葉に、美葉が反応する。

「はい、そうです。美葉さん」
 沢下が大袈裟に頷く。

「ナイフの柄に、微量ですが花粉がついていました。検査の結果<イランカ>という種類のユリの花粉でした」
 
「花粉?」
 貴之が首を傾げる。

「たしか、ミクリのマンションにはユリは咲いていませんでしたよね?」
 尚樹が沢下に確認をする。

「はい。そのとおりです。つまり、その花粉は現場でついたものではない、ということです」
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