ミックス・コーヒー
「ご存知なのですね。そのとおりです。世間に公表はしていませんし、関係者でも知っている者はごく僅かですが……」

 沢下は、吉本を無言で見つめた。
 彼女の次の言葉を待っているのだ。

「……ミクリは、お母さんの死の真相を知るために芸能界に入った子です。たまたま、私の先輩が古亭路美鈴さんのマネージャーだったので、当時の話をしたり、協力したりしました」
 吉本の声が、だんだんと弱々しくなる。

「その先輩のマネージャーさんは、今?」

「山崎さん、という方です。彼女は、古亭路さんが亡くなった時に、周りと戦い、そして業界から追い出されました」

「戦ったというのは?」

「警察や周りが自殺と断定してる中、一人、そうではないと反論し続けたのです」

「確かに、古亭路さんの死は<自殺>ということになってますよね」
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