ミックス・コーヒー
   ②

「おや、私は随分たくさんの人と待ち合わせしていたようですね」

 皆、一斉にその男を見た。

「それも、見たことのある方達ばかりだ……フッ」


 黒のスーツ。中年独特の、少々脂ぎっている頭髪。ふちのない眼鏡の奥で、彫刻刀で彫ったかのようにくっきりとした輪郭の目が、ギョロッと動く。



 この男こそが<川村克彦>だ。

 これで、役者は揃った。



「お嬢さん。やはり、またここに戻っていたのですね。いけない子だ」

 川村の視線の先には、美葉がいた。
 
 薄ら笑いを浮かべ、淡々としたその話し方に、貴之は身の毛のよだつような気味の悪さを感じた。
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