ミックス・コーヒー
「残念ですが、そうではありません。彼女の吹き出した血で汚されなくなかったんですよ。それだけです。本来は撲殺が良かったんですが、下手に目立つ物を持って歩けませんからね。あ、そういえば絞殺でも良かったですね、うっかりしてました」


 
 川村に対して湧き上がってくる、怒り。そして怒り。

 貴之ですら、この感情で頭がおかしくなりそうだったので、尚樹と美葉のそれは計り知れなかった。



「……古亭路誠も、お前が殺したのか?」
「おっと、船崎さん。そうはいきませんよ。その事件に関しては、証拠はないんでしょう」

 たしかにそのとおりだった。
 シゲは、心底悔しそうに唇を噛み締めた。



「……汚れ無き……」
 
 ふと、川村が呟く。

「正確には<純潔>ですが。ユリの花言葉です。私は汚れの知らない物が大好きなんですよ」
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