ミックス・コーヒー
 徐々に状況を把握し始めたようで、ミクリが飛び起きようとしたところを美葉が必死で押さえ込んだ。

「なんで? なんで尚くんが逮捕されちゃうの?」

 ミクリの上げた声が、貴之には痛かった。

「……事件の事を問いただそうとして呼んだ探偵の川村克彦が、オレ達の店で死んだ。尚樹の淹れた紅茶に毒が入っていたらしい」

 ミクリの瞳が、悲鳴を上げていた。

「なんで? 尚くんがそんなこと、するわけないじゃない!」

「もちろんそうだよ。あいつのことはオレ達も信じてる。ただ、警察が尚樹のこと疑ってるんだ。オレ達の事情聴取はもう終わったけど、尚樹だけは……ずっと終わらなくて」

 貴之はそう言って顔を伏せた。


 尚樹を疑っている警察とは、もちろん瀬戸のことだ。

 沢下は、尚樹の人柄を充分理解していたが、上司である瀬戸には従わざるを得なかったようだ。
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