ミックス・コーヒー
「ミクリ、悪いけど話してくれないか。川村の事務所に行った時のこと」

 ミクリの体が、僅かに揺れた。
 不意を突かれたらしい。

 貴之が「ごめん、マネージャーの吉本さんから聞いた」と言うと、ミクリは静かに首を横に振った。


「あたしこそ、ごめん。勝手に行動した上に、殺されそうになったりして」


 ホントだよ、と貴之は漏らしそうになったが、抑えた。

 いくら心配していたからとはいえ、ミクリの気持ちを考えるととてもそんな風には言い出せなかった。


 ミクリの唇が、ゆっくりと開く。

「……あの日、あたしが事務所に入る前、中から話し声が聞こえてきたの。川村が玄関で誰かと電話してたみたい。内容はハッキリとはわからなかったけど<古亭路家>と<探し物>っていうのだけ聞き取れた」
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