ミックス・コーヒー
「約束できる?」

 美葉がゆっくりと頷いた。

「……ったく、勝手なこと言いやがって」
 貴之が席から離れる。

 背中に、美葉と尚樹の視線を感じながら、再び口を開く。


「まだ料理残ってんのに、冷めちゃったな。今、うまーいコーヒー淹れてくるから。待っとけ」


 貴之は振り向くことのないまま、その一言を残して、台所へと向かっていった。

 貴之がいなくなった食卓で、心配そうな表情の美葉に、今度は尚樹が耳打ちをする。

 尚樹の似ていないモノマネを聞いた美葉の表情が、少し緩んだ。


「…不器用ですから。」
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