ミックス・コーヒー
 美葉が、沢下からその手帳を受け取る。
 瞬きもせずに、じっとそれを見つめている。



 彼女は、すぐにわかったのだ。

「古亭路誠さんの手帳です。昨年のですけど」

 すぐに、わかったのだ。

 ……今、手にしている物が、父の形見なんだということを。



 静かに表紙を開く。
 そこには、写真が挿められてあった。

 若い男性と女性、そして幼い少女が二人、仲睦まじく写っている。
 十数年前の古亭路誠と古亭路美鈴、そして美葉とミクリだった。

「それは、美葉さんが持っていた方がいいと思いまして」

 美葉は、その写真をゆっくりと手に取った。
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