ミックス・コーヒー
「あ。美葉、裏になんか書いてる」
 美葉の向かいで、絨毯に直接座っていた貴之にはそれが見えたようだ。

 ゆっくりと、写真を裏返す。


<Our treasure.>


「英語だ。オレわかんねえ」
 貴之が頭をかく。


「私達の宝物」


 そう言ったのは沢下で、美葉は彼の顔を見た後、再び写真の裏に書かれた文字を見つめた。


「……お父さんの、字」


 美葉の表情が、驚きから徐々に喜びに変化する様子がよくわかった。


「美葉の親父って、不器用なんだな。きっと」

 貴之も嬉しくなって、いつのまにか笑顔が滲み出ていた。
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