ミックス・コーヒー
   ②

「この家には今、貴之しか住んでないから、自分の家だと思って遠慮なく暮らしていいよ。美葉」

「おまえが言うなー」
 居間で美葉に勝手なことを言っている尚樹に、台所から貴之がつっこむ。

「でも、それでいいだろ、地獄耳」

「そんな呼び方しないでくれ」

 貴之は美葉にコーヒーを渡す。
 受け取り、口をすぼめて一生懸命冷ましている彼女に、貴之は少しだけキュンとしてしまった。

 ふと、横を見ると尚樹が笑顔で両手を差し伸べている。
 貴之は少しイラッとしつつ、しぶしぶ彼にコーヒーを渡した。

 しばらくして、美葉がおもむろに持っていたカップをテーブルに置いた。
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