ミックス・コーヒー
"persona"
①
貴之は、なぜあの手紙があの場所にあったのか、その時はその意味がさっぱりわからなかった。
だが今、彼らはある場所に向かっている。
いくつかの、正しいはずの欠片を持って。
「……<愛してる>って言うのは、それを口にすることで自分自身が安心するためなんじゃないかと思うんです。それを、何度も何度も繰り返し唱えて、相手がそれを苦しく思うようなら、それは<脅迫>になる。相手を想う<愛>のはずなのに。
そんなふうに考えてしまう僕は、だめな歳のとり方をしてしまったんでしょうか」
重い車内の中で、運転席の沢下の声が静かに響く。
貴之は、なぜあの手紙があの場所にあったのか、その時はその意味がさっぱりわからなかった。
だが今、彼らはある場所に向かっている。
いくつかの、正しいはずの欠片を持って。
「……<愛してる>って言うのは、それを口にすることで自分自身が安心するためなんじゃないかと思うんです。それを、何度も何度も繰り返し唱えて、相手がそれを苦しく思うようなら、それは<脅迫>になる。相手を想う<愛>のはずなのに。
そんなふうに考えてしまう僕は、だめな歳のとり方をしてしまったんでしょうか」
重い車内の中で、運転席の沢下の声が静かに響く。