ミックス・コーヒー
 その二つの影の、動きが止まった。

 貴之と、それに続いて沢下と美葉、そして尚樹が駆け寄る。

 近づいて、ようやくその表情を見ることができた。

<信じられない>といった顔で、こちらを呆然と見ている。

 ガタイの良い体の彼だが、少し震えているようだ。


 特に震えが大きい右腕の先には、ナイフが握られていた。



「タカちゃん……」



 普段の彼からは想像もつかないような、弱々しく細い声。

 貴之には、それが悲しくて仕方なかった。
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