ミックス・コーヒー
「シゲさん。オレの喫茶店で川村の紅茶に毒を入れたの……シゲさんなんだろ」

「………」


 信じたくなかった。

 信じたくなかった。


「あの時、尚樹がやってないとしたら、それが出来たのは……シゲさんだけなんだ」

 シゲはゆっくりと天を仰いだ。

「……尚樹君には、本当に悪いことをした」
 
 一言そう言うと、シゲはまたうつむいた。

「ああ、そうだ。あの時、カウンターの横を通る、みんなから影になった時に。毒を入れた」



 風が、やたらと冷たい。
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