ミックス・コーヒー
「……バカバカしい。何を根拠にそんなことを」

「そして、今もまた一人、殺そうとしていた」

 暗闇の中で、沢下の手元が細く光った。
 そのナイフを横目で見て、河内が鼻を鳴らす。

「それはそこの男が私を殺すために持っていたナイフだろう。君は頭が悪いのか」

「シゲさんが持っていたナイフは、こっちです」
 沢下が、もう一本ナイフを取り出した。

 河内の視線が、沢下の両手元の二本のナイフに止まった。

「先程、あなたが座りこんだ時に落ちましたよ」

 無意識なのだろう。河内がズボンのポケットを探っている。

「……探しても無駄ですよ。これは、間違いなくあなたの落し物なのですから」
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