ミックス・コーヒー
「私、二人に一つだけ、嘘ついた」

「えっ、そうなの? 嘘ついてたんだ……」
「<一つだけ>のわけがねえ!」

 尚樹と貴之は、それぞれ違う意見を持ったようだ。

 美葉が静かに、自分のついた嘘を打ち明け始める。

「私の苗字、<古亭路>じゃない」

 尚樹が声を上げ、芸人並みのリアクションで驚く。

 一方、貴之はわりと冷静だ。

「なんだ、そこかよ。それで、本名は?」

「木村」

「なんか差があるなー。全国の木村さんには悪いけど」

「な、なんで、コテージって言ったの?」
 尚樹にとって、美葉が偽名を使ったことは結構なショックだったようだ。

「見栄を張りました」
 ごめんなさい、と頭を下げる美葉。
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