ミックス・コーヒー
「てことは、美葉も古亭路美鈴のファンだったんだ」

 また、怒り出すかと思いきや、なぜか妙にイキイキし始める貴之。

「実はさ、オレも大ファンだったんだよ。あまりにも尊敬しすぎて、一時期芸人目指してたくらいだよ……」

 興奮し出した貴之の斜め前で、尚樹がニヤリと笑った。

 それに気づき、カチンときた貴之は我をとり戻す。

「まあ、小四の時の話だけどな。……じゃあ、美葉もあのこと、ショックだったろ?」

 貴之の問いに、美葉は頷かなかった。
 代わりに、尚樹が続ける。

「ああ……。あの人、自殺したんだったな」



 貴之の記憶が蘇る。

 貴之が小学生だった頃のこと。
 それは、少年にとってあまりに衝撃的な事件だった。
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