ミックス・コーヒー
「私は、その芸人さんが、なんとなく印象に残ってるってだけ」

「なんだあ……。せっかく同盟とか組めると思ったのに」
 貴之が、わかりやすく残念がった。

「ねえ」

 ふと、美葉が思い切ったように話を切り出した。

「本当に、ここにいていいの? 私」

「うん、そうだよ」
 すぐさま尚樹が笑顔で首を縦に振る。

 美葉は尚樹の表情を確認した後、続けて貴之の方を見た。

「貴之も許してくれる?」

 静かに、溜息をつく貴之。
「仕方ないからな。約束しちゃったし」

 正確にいうと、約束したのは尚樹なのだが、それでも約束は結んだら守る、というのが貴之の男としてのポリシーである。


「よかった」

 ふ、と。美葉の口元が少しだけ緩んだ。
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