ミックス・コーヒー
「……シゲさん」
 ゆっくりと、シゲの前に現れた恰幅の良い男は、そう名前を呼ぶとシゲに向かい、軽く礼をした。

「瀬戸。お前には迷惑をかけたな。いろいろとすまなかった」

「……お世話になりました」

 瀬戸は、もう一度、今度はさっきよりも深く礼をした。

 ふと、シゲが横に目をやると、いつのまにか泣きじゃくってまともに話も出来そうにない、沢下の姿があった。

「沢下」

 シゲの呼びかけに手のひらでぐいっと涙を拭う。

「はい」

「随分……立派になったな」
< 350 / 366 >

この作品をシェア

pagetop