ミックス・コーヒー
「すごい、黒い雨が」

「なんだよ、オレ! マンガみたいなことしちゃったよ!……つーか、何言っちゃってんの、おまえは!」

「だって、このままずっと一緒に暮らすなら、結婚するでしょ。どうせ」

 美葉が、きょとんと貴之の顔を見る。

「いや、しかも<どうせ>ってなんだよ!」

「あ、間違った。<仕方ないから>だった」

「いや! 間違ってない、間違ってない! ちくしょー、さっきよりひどくなったんじゃねーか」


 美葉が小さく笑う。
 
 彼女は前よりも、笑うことが増えたようだ。


「……美葉、わかってんの? 結婚ってどういうことか」

 貴之が、美葉の目を見つめる。

 彼は、もう美葉の目を怖いと思うことはなくなっていた。
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