ミックス・コーヒー
「わかってるよ。自分の好きな、大切な人と新しい家庭を作ることでしょ」

 貴之は、一瞬聞き間違えたのかと思った。
 まさか美葉の口から、そんな言葉を聞けるなんて思いもしなかったからだ。


「私の夢だったの。貴之なら、叶えてくれるでしょ?」


 美葉の瞳に自分の姿が映る。

 それが、徐々に大きくなる様子を途中まで見つめていたが、ふと、途絶えた。

 小さな美葉の温もりを、貴之は自分の唇に感じ、そしてゆっくり、そっと離していった。


 再び目を開くと、目を閉じた美葉の顔がそこにあった。
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