ミックス・コーヒー
 貴之がカウンターの向こうに消えてから数分後。

 香ばしい香りをお盆にのせて戻ってきた。


「おまちどうさま。ミックス・コーヒーです」


「どこが?」

 美葉が尋ねたのも無理はない。
 それは、一見いつもと変わらない、貴之のコーヒーだった。

「<貴之・オリジナル・ブレンドコーヒー>ですよ!」

「つまんねー!」
「つまらない男」
「ホントつまらん!」

 切ない、非難の声が次々と上がる。

「おまえら、いい加減にしろよ! 特に二番目に言ったヤツ!! 文句言う前にとりあえず飲め!」

 貴之が本気で怒ったので、とりあえず三人はそのコーヒーを頂くことにした。
< 361 / 366 >

この作品をシェア

pagetop